増田健人・峯松健太朗ペア2冠 インカレ決勝再現を制す
全日本学生選抜ソフトテニスインドア選手権大会初優勝
日本学生ソフトテニス連盟主催の第46回総理大臣杯全日本学生選抜インドア選手権大会が12月18日に横浜国際プールのアリーナで行われ、男子は同志社大学の大黒柱で全日本学生選手権(インカレ)王者の増田健人(商4)・峯松健太朗(商2)が堂々の初優勝に輝いた。学連主催大会の最終戦となるこのインドア選手権は2012年シーズンの各種大会で優秀な戦績を挙げた男女各上位ランキング12ペアが出場するビッグイベントである。増田・峯松は予選リーグの立ち上がりで躓いたが3ペア同率の総得失ゲーム差で勝ち上がる幸運にも恵まれ決勝トーナメントでは地力を遺憾なく発揮して有終の美を飾った。同志社大学勢の優勝は世利卓史・越智大輔ペア以来5年ぶり2度目となった。
増田健人(商4)

峯松健太朗(商2)

インカレとの2冠達成だけでも大偉業だが増田はこのタイトルを獲得した結果、学連主催の全公式大会個人戦(ダブルス&シングルス)を全て制する快挙を成し遂げた。同志社大学勢では4年前に世利卓史(商)が樹立した際に「今後破られることはまずない」とみられた不滅の大記録だがスーパースター増田があっさりこの偉大な先輩の足跡をなぞった。増田は今季に社会人も含めた全日本シングルス選手権も制した。内容において大先輩を凌いだといってよかろう。最後の最後で大記録を完成させた増田に最大の賛辞を送るとともに彼が黙々と重ねてきた普段の努力に敬意を表し万雷の拍手を送りたい。おめでとう。よく頑張りました。奮闘して力を貸した峯松はもちろんのこと後輩たち全員が彼の背中を懸命に追いかけてゆくと信じている。
同志社大学からは他にインカレ3位の玉沢将己(スポ健1)・足立卓磨(商3・主将)とコンスタントに好成績を残したランキング9位の徳久貴大(スポ健2)・林大喜(スポ健1)の2ペアが出場した。ともに健闘して予選リーグ2位につけたものの決勝トーナメントには進めなかった。この口惜しさを来季に晴らしてほしい。
足立卓磨(商3・主将)

玉沢将己(スポ健1)

徳久貴大(スポ健2)

林大喜(スポ健1)

決勝戦には桂拓也・九島一馬(早稲田大学)が勝ち上がりインカレ決勝の再現となった。しかし中身は夏とは全然違った。オフに入って就職活動や試験準備などで増田も峯松も満足な練習は出来ていない。それでも1戦ごとに感覚を掴みながら勝負勘を研ぎ覚ませていった。決勝戦の段階で2人は夏場に見せた隙のないコンビネーションプレーを自在に繰り出す状態に戻っていた。ともにペアは違うとはいえ増田は前回大会準決勝で桂に敗れている。切れの良いダブルフォワード戦法を駆使する嫌な相手だが問題にしなかった。
とにかく増田と峯松の集中力が凄まじかった。鬼気迫る迫力が観客席にまで伝わってきた。いきなり桂のボレーで始まったが直後に峯松が強烈なボレーを叩き返したのを合図に圧勝ドラマが幕を開けた。このボールカウント1-1から九島がダブルフォールトを犯したのである。天才的なスーパールーキーもコートに充満する2人の圧力に萎縮したとしか思えない。この第1ゲームを④-2でものにした増田・峯松はこの後一気呵成に終幕まで突き進んだ。結局⑤-0。まるで早回しフィルムを観ているようだった。競り合う場面は一度もなかった。力量が接近していても諸条件が絡めばこういう呆気ない試合も稀にある。増田ポイント3・ミス2、峯松P8・M3、桂P3・M5、九島P1・M5。後半2ゲームの失ポイントはたたの2本である。とにかく増田・峯松は強かった。圧倒的な強さだった。
このワンサイドゲームの伏線は準決勝にあった。屋外コートでもダブルフォワードに徹するルーキーペア丸中大明・鈴木琢巳(中央大学)に接戦を余儀なくされた。手堅くリードを保ちながらゲームカウント2-1の第4ゲームでデュースを繰り返すこと5回。必死で差を広げたのに安堵も手伝ったのか2ゲーム連取されて追いつかれた。しかし焦りはなかった。2人の実戦感覚にもう不安要素はなかった。4-3リードで迎えた第8ゲームは常に優位に運んだ。ボールカウント3-1であっさりマッチポイント2本を握ったがここから粘られた。なかなか決めさせてくれない。この試合2度目のデュース5回。実に6度目のマッチポイントを峯松がバックボレーで決めた。このタフな展開が決勝での適度の緊張と緩和を生み出したといえる。
インカレとの2冠。しかも増田には個人完全制覇がかかっていた。劇的な終焉には不思議なご加護があった。常々から快挙の陰には目に見えぬ力が介在するものである。増田・峯松は予選リーグ初戦の白井拓巳・堂野貴寛(明治大学)ペアに3-④で競り負けた。この時点で全ては夢幻に消えたと誰もが思った。ところがこのあと粋な演出が準備されていた。神仏のご意思か。天命か。白井ペアは次の小栗元貴・船水雄太(早稲田大学)に3-④で敗れた。ただ敗れただけではない。ゲームカウント0-3のボールカウント0-3でマッチポイント3本を握られていた。まさに風前の灯だった。なんとそこからファイナルゲームまで巻き返したのである。勝ってしまえば2勝となる白井・堂野が勝ち上がる。だがそこで負けてくれた。
勝負事に「もし」は無意味だと承知しているがこの場合は「もし」を否応なく連発してしまう。白井・堂野があのまま0-④でもし負けていたら増田・峯松は小栗・船水に④-0か④-1で勝たなければ得失ゲーム差で及ばず決勝トーナメントに進めない。勝負の綾だろう。増田・峯松は④-1か④-2で勝てば得失ゲーム差で上回ることになった。結果は④-2。事なきを得た。もし④-3勝ちなら3ペアとも同率かつ得失ゲーム差も同じで総得失ポイント差を計算する羽目に陥っていた。増田・峯松の2冠と増田の完全制覇の偉業は幻に終わっていた可能性は限りなくあったのである。運も味方につけた。これも大きな力量なのである。
チームメートの玉沢・足立は予選リーグで桂・九島に敗れたが川口直也・齋藤祥経(中京大学)を寄せ付けなかった。直近のジャパンカップU-20で優勝した(ペアは早稲田大学・能口拓磨)玉沢は自信溢れるプレーを披露した。主将の足立も攻守に存在感を示した。徳久・林も健闘した。早稲田大学の大将ペア品川貴紀・内山雄基を力勝負で退けた。直前のケガで万全の態勢ではなかった徳久は持ち味の柔らかいロビングが威力を発揮した。スケールの大きなボレー、スマッシュを連発した林のプレーも関東勢に強い印象を残した。来季の飛躍を期待しよう。
<体育会ソフトテニス部アドバイザー(コーチ)高橋寛>
<写真 同志社スポーツアトム編集局 谷 咲奈恵>
【関係分戦績】
▽予選リーグ(7回ゲーム)A
増田・峯松3-④白井・堂野(明治大学)、増田・峯松④-2小栗・船水(早稲田大学)
▽同B
玉沢・足立④-1中山・齋藤(中京大学)、玉沢・足立1-④桂・九島(早稲田大学)
▽同C
徳久・林④-2品川・内山(早稲田大学)、徳久・林2-④林田・巽(日本体育大学)
▽決勝トーナメント(9回ゲーム)準決勝
増田・峯松⑤-3丸中・鈴木(中央大学)、桂・九島④-1林田・巽
▽決勝
増田・峯松⑤-0桂・九島